BE WITH YOU





<4>




安心しきったように、おれの横で寝息をたてる優。
今日一日大騒ぎだった。心から楽しんでくれているのが伝わってきた。
優を連れてきてよかった・・・おれには大満足の小旅行だった。
ふたりで買ったオルゴールは、一生の宝物だ。
ただ、優が先に寝ちまったのは残念だけれど・・・・・・



優の髪を、頬をやさしくなでる。
キスもたくさんしたし、こんなにかわいい優の寝顔が見れたし、
今日のところは我慢するとしよう!

昔のおれなら考えられない、好きなやつを横に何もしないなんて・・・・・・
それにしても、おれたちって、お互い自分を表現するのが下手だな。
そのおかげで、同じ想いのくせに、すれ違い、遠回りばかりだ。
今回の件だって、ほんとはずっと抱きあいたかったのにな。
ククッと自然に笑いが漏れた。



「何がおかしいんですか?」
優の声にドキッとする。頬をなでていたおれの手に手を重ねる優。
「なんだ・・・起きてたのか」
「ちょっと意地悪してみたくなって・・・寝たふりしてました。先輩どうするかな?って思ってたら、黙りこんじゃって。起きるタイミングを失っちゃいました」
少しはにかんだ笑顔がたまらなくかわいい。
「―――何笑ってたんですか?」
おれの手の指を一本一本愛しそうにさわりながら、おれに問いかける。
「いや・・・おれたちって、いつも同じこと考えてるのに、いつもうまく表現できないなって・・・」
途端、くしゅんと優がくしゃみをした。
おれは、優の肩までシーツをかぶせてやり「また明日話をしような」と声をかけ、ワインを飲もうとベッドから立ち上がった。
「先輩っ」
優がおれの手を引きとめた。
その力がびっくりするほど強くて、おれはベッドにしりもちをついた。
スプリングのきいたベッドの衝撃で、優の身体も軽く跳ねる。

その声が、どこか切羽詰ったように聞こえて、おれはワインを諦め、手を離そうとしない優の横に身体を滑り込ませた。
前髪を優しくかき上げてやる。
指に絡まることのない、さらさらの艶やかな髪。
「先輩は・・・今、何考えてますか・・・?」
「何・・・って・・・・・・」
「ぼくたち、いつだって、同じこと考えてるんですよね?なのにいつも遠回りしてしまうのは、素直になれないからですよね?たぶん・・・・・」
「優・・・・・・」
「ぼくは・・・たぶん・・いえ絶対・・先輩と同じこと考えてます・・・だから・・・先輩・・・・・」
こんな至近距離で、潤んだ瞳で見つめられては、おれももう終わりだ。
いいのか・・・?

「おれ・・・かなり我慢してたから・・・冷静でいられるように努めるけど・・・わかんないよ?」
「どうでもいい・・・ぼくは先輩が・・・ほしい・・・・・」
優は、照れて真っ赤になって、顔を隠すようにおれの胸に擦り寄った。





優はわかっているのだろうか?
そんなしぐさがおれを誘っていることを・・・煽っていることを・・・
抱きたいのはおれの方なのに、どうしておれは優にこんなことを言わせているんだろう?
この前だってそうだった。
抱きたい、優をモノにしたいのは、おれのほうなのに!
「おれこそ、優を抱きたい・・・優を感じたい・・・感じさせたい・・・優・・・好きだ・・・・・・」
優はおれを見上げ、そのふっくらしたくちびるでささやいた。
「ぼくも・・・先輩が大好き・・・・・・」
そのまま身体を回転させ、優の上に重なる。
「まだ何もしてないのに・・・優の身体・・・熱い」
意地悪っぽく言うと、優は怒ったように顔を横にそむけた。
顔の横に手をつき、優を見下ろす。
この角度から見る優は、とても小さくてとてもかわいい。
「優、顔見せて?」
「嫌です・・・先輩意地悪言うから・・・・・・」
すねた優もかわいくてたまらない。
とにかくおれにとってはどんな優だってかわいいんだ!
「ごめん、優・・・でもそれじゃ、キスもできないよ?優はキスしてほしくない・・・?」
しばらく考えていたようだったが、あきらめておれのほうを向いた。
「素直な優・・・いっぱいあげるよ・・・?」
おれは、そのふっくらしたくちびるにくちびるを重ねる。
深いキスはしない。
ふれるくらいのキスを何度もおとす。
途中、幾度かくちびるを舐めたり優しく咬んだりしてやると、瞼を震わす優。
くちびるをその瞼に、頬に、耳にゆっくり移動させる。
耳元で「優」と囁くとびくっと身体を震わす。
耳朶への愛撫に色っぽい吐息が漏れる。
再び食べたくなるようなくちびるに戻ると、優から舌を絡めてきた。
さっきまでシーツを掴んでいた手が、おれの首にまわされる。

優の舌を押し戻し、優の口腔を貪る。
おれの暴れまわる舌を、執拗に追いかける優。
「・・・ん・・・・・っ」
角度を変えて、くちびるを離さないおれへの抗議のような声が優から漏れた。
だが、おれはまだまだ解放する気はない。
その柔らかく熱い舌を、おれは離さない。
おれたちの身体がふれあうのを邪魔するバスローブの紐をとき、くちびるは離さないまま脱がしにかかる。
優もそれに協力するため、身体を起こす。
いやに積極的な優におれはますます夢中になった。





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